花とウタ

オアシスを夢想

あなたと生きましょう

いつもより一階分高いところで眺める星は、どことなく鮮やかできれいだ。ダイヤモンドを繋いでみせると星座線を追えない彼はぐっと私にひっついて、同じ方を見上げて私の指差すところをなぞる。
今日は少し体の調子が良かったので、私のベッドではなくシエルのベッドに上げてもらった。二人で腰掛けて、シエルの作ってくれたショコラを飲みながら星を見るなんて一体いつぶりだろう。ショコラと、ストールと、すぐ隣のシエルの体温。空に向けた窓から零れる夜の空気は冷たく少し火照った頬に心地いい。夜空をなぞり終え、まだ見えない星座線と悪戦苦闘しているシエルにぽすん、と体を預ける。とまどうような間をあけて、私の肩にシエルの手がまわされる。
しばらくそうしていたところで、シエルは私の手から飲み終えたショコラのマグカップを奪い出窓の手前にふたつ並べた。合わせて体を起こした私に振り向いて、頭を数度撫でてくる。そして額にキスをひとつ。シエルのこういう動作はくすぐったいし、そんなに好きなわけじゃあない。よくできました、なんて言われてるみたいで。ちょっとだけむっとした気持ちで、私もくしゃりと彼の頭を撫で返す。突然のことに目をしろくろさせるシエルを横目にベッドに深く腰掛け直し、そして膝を叩いた。
シエルくん、おいで。そう彼を見上げるとずいぶんと困った顔をした。いいから、となお迫る。じっと見つめる。にらめっこでもしてるみたいに、ひたすら待つ。しばらくして、すっかり顔を赤らめたシエルはちょっと余裕なさげに私の頭をもう一度撫でた。そして膝に頭を預けてくれる。やっと折れてくれた! 嬉しくなって私より低い位置にきたシエルの頭を撫でつづける。ショコラは飲み干してしまったけれど、ストールと、てのひらで感じるシエルの体温。今夜は星がきれいに見えているのにあたたかい。シエルは耳まで真っ赤にして私に背を向けているけれどもう少ししたら私を見上げて笑ってくれるだろう。
2014/04/10
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