花とウタ

オアシスを夢想

首のない椿の懺悔

「うつくしいまま、死にたかったわ」


まるで独り言のように囁かれたことば。メイコちゃんはにこりと笑い、素敵でしょうと言う。どう返事をするべきか考えあぐねていると、馬鹿、と頭をこづかれた。


「嘘でも君はうつくしいくらい言いなさい」


君はうつくしい。輪唱すると、メイコちゃんはそうよと満足げに微笑んだ。私はうつくしいのよ。何度となく呟き、楽しそうにしている。

私はうつくしい。私は死んでもうつくしい。だからうつくしいまま死にたいわ。

唄うように言う。リズムに乗せてメロディをつけて。独り言かと訊ねるとそうよと返ってきた。良かったよ。僕にメイコちゃんは殺せないもの。


「ねえカイト」


なあに。


「わたしのことは、きらいかしら?」


にこりと笑うから、ああねだっているのだなと思った。メイコちゃんは求めているのだ。好きということば。愛しているよということば。抱きしめてあげること。首を絞めてあげること。それらすべてを、僕に。


「ばかだな、メイコちゃん」


僕はメイコちゃんがだいきらいだよ。









首のない椿の懺悔
(ねえ、愛してた)
2010/02/07
inserted by FC2 system